トランプ政権は、新型コロナウイルス流行の非常事態にあって、施設に収容されている移民の感染対策に本腰を入れていない。
世界最大規模の移民収容施設を持つ米出入国管理機関、移民関税執行局(ICE)は、全国200カ所を超える施設に4万人近くの移民を収容している。全土で感染が広がり始めた1月以降も、移民の収容を停止していない。複数の施設で移民が、不衛生な環境に抗議し解放を求めるためのハンストを始めた。
ウイルスが猛威を振るう今、誰もが健康と安全の危険にさらされている。感染者数でも死者数でも世界で最も多い米国だが、ICEは収容施設内での感染拡大を防ぐための実効性ある対策をいまだに取っていない。石鹸や消毒剤などの配布や社会的距離の確保などの対策を取らず、収容する移民の施設間での不必要な移動を停止することもない。
コロナ危機の中、収容されている人びとは極めて脆弱な状況に置かれている。在留資格上の問題だけで懲罰的な拘束を続けるのは、虐待であり、健康に対する権利の侵害である。
アムネスティは、複数の収容施設での感染が疑われる事例とロックダウン(封鎖)情報を立て続けに入手している。
複数の弁護士の話によると、収容されている人びとは、ウイルスの感染リスクや感染予防について説明を受けることはなく、感染が疑われる場合でも検査を受けないことが多いという。
基礎疾患を持つ人が、満足に健康管理もできない。その上、消毒用品やマスクを要求しても拒否されるため、感染して重症化し死に至る恐れさえある。大変気がかりな状況に置かれている。
テキサス州ディリーの施設では、移民に感染予防策を説明したり、予防用品などを提供したりすることもなかった。
アムネスティはICEに対し、拘束に代わる手段を早急に検討・実施し、例外を除いては、人道的見地から早急に、収容されている移民を一時的に解放するよう求める。
特に高齢者、基礎疾患を持つ人、その他、感染時に重症化しやすい人を優先して対応すべきだ。 また、すべての未成年者と家族を解放すべきだ。
米国議会も、入管を統括する国土安全保障省にできる限り多くの移民を一時的に解放するように指導する必要がある。州知事など地方当局は、各入管施設に対し収容者数を減らすよう指示するべきである。
背景情報
アムネスティは3月17日、他団体と共同で移民被収容者の大半を収容する11人の州知事に対し、その保健・免許権限を行使して、連邦移民収容施設や州内の刑務所などに対し、被収容者の収容人数を大幅に減らすよう求めた。
3月24日には、南北アメリカ各国が、新型コロナウイルスに対する人権を尊重した対応を取る際のガイドラインを提言した。
一方、人権、健康、移民、難民に関する国連の4機関は3月31日に共同声明を発表し、窮屈で非衛生的な状況で収容されている移民らを遅滞なく解放することを求めた。また、十分な法的根拠もなく収容されている人や未成年者とその家族の即時解放も求めている。
アムネスティ国際ニュース
2020年4月7日
出典::アムネスティ.米国:パンデミックの中、収容されている移民の解放を©アムネスティ2020