米国上院のウイグル人権政策法案の通過 - 新疆の人的被害の終わりの始まりか

「ウイグル人権政策法案」が米国下院で可決されれば、中国の犯罪を糾弾する世界初の法案となる。

9月11日から12日にかけて、マルコ・ルビオ上院議員は上院での重要な投票について、いくつかのツイートを行った。
9月11日から12日にかけて、マルコ・ルビオ上院議員は上院での重要な投票について、いくつかのツイートを行った。

中国は二度と 新疆ウイグル自治区(ウイグル族は東トルキスタンと呼ぶ)で犯した罪を隠蔽することはできない。数か月間にわたり、活動家、NGO、国際組織などからの激しい糾弾が続いた後、米国の上院を『ウイグル人権政策法案』(S.178)が通過したことで、先に進むしかない段階まで到達した。可決されたのは9月11日であり、大きな動きである。両党全会一致で可決したが、そのような法案としては世界初であることが、何よりも重要だ。実に初めて、主権国家の立法府がウイグル族ムスリムに対する虐待を非難し、行動をよびかけているのだ。

それだけではない。この法案は文字通り、「新疆のチュルク系ムスリムの重大な人権侵害を非難し、中国内外の当該コミュニティの恣意的な拘束、拷問、嫌がらせの中止を要請する」ために作られたのである。

つまり、米国上院が承認した法案は以下の事柄を認めたことを意味する。第一に、ウイグル族だけでなく(悪名高い 「教育による改心」のための強制収容所に最大300万人が拘束されている)、カザフ族、ウズベク族、キルギス族、トルクメン族、タタール族やその他(何千人も)のチュルク系少数民族のすべてが中国で迫害されていること。第二に、これらのチュルク系の人々をムスリムとして特定し、彼らが信仰を理由に迫害されていること。第三に新彊で迫害されているチュルク系ムスリムの人々は中国の国境外でも迫害を受けており、それは国際的にも違法行為であること。

特別に機敏で優れた連邦議会議員であり、「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」共同議長も兼ねるマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員(共和党、フロリダ州選出)、は、これらの虐待を非難するときには率直に中国を「全体主義(中略)政府」と呼んでいる。なぜなら「広範囲に及ぶおぞましい人権侵害」と「米国本土で米国市民と合法的永住者に対して、脅迫、恫喝」を行っているからだ。

これは前例のない出来事である。実質的には、この法案によって、国家情報長官が国務省と連携して報告書の公布を実行に移し、「新疆各地の取り締まりによって引き起こされた国家と地域の安全保障上の脅威、中央アジア、東南アジア政府がチュルク系ムスリムの難民と亡命申請者を強制的に送還する頻度、予測警備や大規模データ収集と分析など、中華人民共和国政府が使用しているチュルク系ムスリムの大規模拘留と監視を容易にする技術の移送と開発状況を査定すること」が可能になる。

この報告書には「政治的『再教育収容所』に拘束された個人の数および拷問、信仰の放棄の強制などの虐待の有無を含む新疆地方の収容所拘束者の状態」、「強制収容所の地理的位置の可能な限りの記述、当該施設に拘束されている人々の数の推定」、また「中華人民共和国の『再教育』の責任所在機関のみならず、中華人民共和国当局がウイグル族の拘束者を『再教育』する際に用いた手段を可能な限り記述」、そして「拘置所や刑務所をはじめとする施設に恣意的に拘束された個人の数の査定」などが盛り込まれる。

さらに、「新疆各地で『政治的再教育』収容所の建設と運営、監視技術や運用組織の提供と運用に携わった全中国企業の一覧の付記を含む」。そして「『政治的再教育』収容所への送還の危機にさらされた状態で収容所と地域の工場で行われた低賃金の強制労働」から「利益を得た中国企業と業界のリスト」も盛り込まれる。

「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が新疆の衝撃的な状況に関して綿密かつ正確な報道を行っていることを理由に、その従業員を脅迫している中国の動きを非難する一方、法案は国務長官に対し、「国務省内に新たな職位として『新疆担当米国特別調整官』を設立し、外交、政治、広報外交、経済支援、制裁、テロ対策、安全保障資源を行うほか、米国政府内で議会報告を義務付け、広く認知されている新疆地区の重大な人権侵害に対応する」ことも検討するよう嘆願している。

最後に、9月11日に米国の議員が承認した文書は「人権の包括的責任に関するマグニツキー法」(『ロシア及びモルドバ、ジャクソン=バニク除外およびセルゲイ・マグニツキー説明責任法』)の適用を要請している。この法律により、2016年から米国政府は、世界のどこかで人権侵害に関与した外国当局に制裁を加えることができるようになっている。そして、2016年の『フランク・ウルフ国際信教の自由法』の徹底的な施行も求めている。フランク・ウルフ(Frank Wolf)元下院議員(共和党、ヴァージニア州選出)の名を冠するこの法律は、米国が外交の強化、教育、対テロ対策、外国支援を通して世界の信教の自由を促進する能力を向上させようとするものだ。

これから下院が法案の審議に入る。米国議会の両院を通過すれば、新疆で違法に拘束され、嫌がらせ、虐待、拷問を受けている数百万の罪のない人々の苦しみが終わりの始まりを迎えるだろう。長い道のりであることは間違いないが、最初の一歩なくしては、何も成し遂げられない。

出典:BITTER WINTER / マルコ・レスピンティ(Marco Respinti)