昨年8月31日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は新疆ウイグル自治区の人権状況に関する調査結果を公表し、ウイグル人などイスラム教徒らに対する人権侵害を明らかにした。
公表から1年、国連を含む国際社会は、中国の国際法違反の人権侵害に対して行動を起こすどころか、公正と真実、被害者への補償を実現する上で必要な断固たる措置を回避してきた。
調査結果が公表されたのは、当時のミシェル・バチェレ人権高等弁務官の任期最終日だった。メディアが暴露したバチェレ氏に宛ての中国政府の書簡草稿には、「新疆の状況に関する報告を公表しないよう要請する」とあった。
昨年10月、国連人権理事会加盟国は報告内容の討議を呼びかける決議案をわずかな差で否決した。この発議自体、中国の人権侵害の問題を協議する特別会議の招集を求めた国連の専門家の要請とは程遠いものだった。
バチェレ氏の後任、ヴォルカー・ターク氏は昨年12月、前任者の報告で明らかになった重大な人権侵害について「自ら当局に働きかける」と約束した。だが、その後の対応はお粗末極まりなく、今年3月、「北京との対話のチャンネルを開設した」と報告し、6月には「さらなく関与を模索する取り組みをする」と語るだけだった。
高等弁務官のような人権担当官を含め、国内外の関係者が、官民を問わず、あらゆる手段を用いて、中国の人権侵害について当局と率直かつ証拠に基づく対話を行うなど、中国の抑圧的な政策に意味のある変化を求めていくことが必要だ。
アムネスティをはじめとする団体は、拷問や虐待、性暴力やジェンダーに基づく暴力などの人権侵害事例を調査で確認し、OHCHR報告にも反映されている。
国連報告書は、ウイグル人などのイスラム教徒が大多数を占める集団に属する人びとの恣意的、差別的な拘束は、国際法上の犯罪、特に人道に対する罪にあたる可能性があると指摘している。
報告から1年経った7月下旬、習近平国家主席は新疆のウルムチ市に抜き打ち訪問し、違法な宗教活動への規制強化を担当当局に求めた。
国際社会は、OHCHR報告から1年たった8月31日を行動喚起の機会とすべきだ。新疆ウイグル自治区での国際法に反する犯罪やその他深刻な人権侵害を調査する国際的機関の設置が喫緊の課題だ。恣意的拘束、強制失踪、虐待被害者などの家族は、妥協や遅延ではなく、答えと責任追及を求めている。
新疆で囚われている人びとの釈放を求めるアムネスティのキャンペーンは、これまでに126人の収容者の名前などを確認した。この人数は、2017年以降に新疆の収容所や刑務所に恣意的に拘禁されているおそらく100万人以上の人びとのごく一部にすぎない。
アムネスティ国際ニュース
2023年8月31日
出典:中国:今こそ新疆ウイグル自治区の人権問題に対応を©アムネスティ2020