「5対1管理体制」では、中国で禁止されている宗教団体のメンバーが釈放された後、役人と親族がその1人ひとれの監視役になる。
先日、全能神教会の信者が拘束を解かれ、普段の生活を取り戻そうと中国中央部の河南省の自宅に戻ったが、実際は思っていたほど容易ではなかった。平頂山市轄下の村に帰り着くなり、地元宗教局と郷政府から1人ずつ、村の職員2人の計4人の役人が四六時中、その女性を監視し始めたのだ。さらに家族の1人が彼女の行動を見張り、仲間の宗教関係者と連絡をとるのを防ぐように指示されていた。
後から分かったことだが、女性はいわゆる「5対1管理体制」の監視の標的に挙げられたのだった。この体制は、法輪功、全能神教会、全範囲教会や同様の「邪教」 団体で活動したために投獄され、最近釈放された収容者を監視するために作られた。女性はさらに、任命された職員が無作為に居場所を確認したり、行動や会った人について問い合わせたりできるように携帯電話の電源を常に入れておくことを求められた。
そのような厳しい監視下での生活を続けられなかった、この全能神教会信者は村を離れ、どこか別の場所で仕事を探そうと決めた。それでも、自由は長くは続かなかった。その地域の宗教局職員が彼女に電話をかけてきて、監視を続行すると告げたのだ。
「5対1体制」は、中国全土に急速に広まり、既に残忍な迫害を受けている全能神教会のような宗教運動の信者たちにとってさらなる重圧になった。個人責任の宣誓を迫られた地元の職員らは宗教を管理し、押さえつけようと腕まくりをしている。
2019年4月、東部沿岸の山東省の市政府が「5対1管理体制」始動の会議を開催した。任命された職員は「個人責任状」の署名も強いられた。いかなる情報も漏洩しないよう、その会議では「非行集団による犯罪の撲滅」のキャンペーンを議論すると伝えられた。中国共産党 が信仰を持つ人々の取り締まりを隠蔽するのによく使うウソである。
山東省の政府職員の挙げた例によると、人口約80万人の 県級市である膠州市に「5対1管理体制」が適用される監視対象が1,100人いるという。そのうち200人は「重要」と目され、特に集中的な監視を受ける。
「5対1管理体制」の担当になった者はその対象が確実に自分の目の届く範囲にいるようにしなければならない。彼らが転居した場合は移転先の当局に連絡し、監視と思想的な取り組みが途切れず行われるようにする必要がある。
信者の監視責任を負う担当者のランクと地位はさまざまだが、政治的業務に関わる地元警察の従業員、街道事務所、村の党支部書記や、村の婦女連合会といった中国共産党関連団体の職員が選ばれる場合が多い。
Bitter Winterが入手した内部資料によると、山西省北部の地元政府は「5対1管理体制」始動に伴い、下位の政府職員に全能神教会に対抗するための「対象に対する責任状」に署名を要求した。任命された職員は「信者の動きを速やかに把握し」、常に「法律教育クラス」を開くよう指示される。監視下の信者ごとに詳細にわたるファイルを作成し、ID情報、教育状況などを明示しなければならない。データは常時更新し、「改心の進捗」、評価結果などを詳述することになる。
山西省のある地域が発行した 邪教団体との攻防のための「対象に対する責任状」(文書の一部は中国国内の協力者に危険が及ぶことがないように、安全面を考慮して隠している)。
山東省淄博市の全能神教会の信者は刑務所から釈放された後、常に近隣の委員会と警察署の担当者が訪ねてきて写真を撮っていることを報告した。警察は事前連絡なしにいつでも自宅に入って来るという。家族も、彼を見張り続けるように言われている。他の信者から連絡があるのを見つければ、警察に通報しなければならない。宗教活動を続けている何らかの証拠が見つかると、男性は再び逮捕されてさらに重い刑を受けるだけでなく、親族の雇用も打ち切られる。脅された家族は、たとえ宗教に関係のない友人であっても彼に電話がかかるたびに問い詰めることになる。
出典:Bitter Winter/李明軒による報告