中国:国家安全法 香港人に突きつけられた凶器

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中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は6月30日、香港の国家安全法案を可決した。

「国家安全維持法」の成立は、香港市民にとって大打撃であり、香港の近年の歴史の中で最大の人権への脅威だ。今後、中国は思うがまま犯罪容疑者に独自の法律を課す権限を持つことになる。

詳細を明らかにしないまま法案の審理を急ぎ、政府批判を弾圧する手段を中国政府が手にしたことは、香港市民に大きな恐怖心を与えた。恐怖心で香港を統治するという狙いが、そこにはある。

成立を急いだもう一つの理由は、9月の立法会選挙で民主派候補を排除するためだ。民主派候補は国家安全法の標的にされかなねい。

法律の施行に当たって、香港当局は自らの人権義務をしっかり遵守しなければならない。そして、それを守らせるのは国際社会にかかっている。

香港にとって重大なこの局面において、国家安全法が人権侵害や自由の剥奪に利用されるようなことがあってはならない。

背景情報

国家安全法は6月30日に可決され、習近平国家主席が署名して成立した。その後、香港の憲法にあたる香港基本法の付属文書に加えられる。

個人や団体に「国家の安全を危うくする活動への参加」を禁じる同法には、さまざまな人権上の懸念がある。国家分裂、国家転覆、テロ、「国家の安全を危うくする外国・海外勢力との結託」などが、犯罪行為とみなされる。多岐にわたる違反行為があいまいに定義されているのは、反体制派の取り締まりに適用されてきた中国本土の国家安全法と同様だ。

また新法成立で、中国政府の出先機関「国家安全公署」が設立される。中国では、この種の機関が、人権擁護活動家や反体制派の監視、嫌がらせ、脅迫、秘密裏の拘禁などを行っている。

香港と中国当局は、香港での「テロ行為や暴力への脅威」に対抗するために国家安全法の導入が急務だと主張してきた。しかし、この1年、香港の街頭で行われてきた抗議デモは極めて平和的なものだった。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はジュネーブ時間の6月30日朝、国連人権理事会で演説する。数日前、同理事会が任命した特別報告者50人以上が、国家安全法の導入などについて懸念を示したが、連名文書での懸念の表明は異例のことだった。

アムネスティ国際ニュース

2020年6月30日

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